
タイのB2B展示会とは、バンコク近郊の3大会場(BITEC・IMPACT・QSNCC)を中心に年間100件以上開催される、ASEAN有数の業界別ビジネス見本市群である。製造業から食品、IT、物流、医療まで業界軸が明確に分かれており、出展や視察の意思決定は「会場×業界×時期」の3軸で絞り込めば外しにくい。
本記事は、タイ進出や事業拡大を検討するB2B企業の事業企画・出展担当・調達担当向けに、2026年5月から2027年5月までの主要展示会を業界別・月別に整理したカレンダーである。読了後には、自社事業に合う展示会を30分以内で絞り込み、出展・視察の準備リストに落とし込めるようになる。

タイ展示会の選定で失敗する最大の要因は、業界マッチングではなく会場ミスマッチである。 BITECは製造業・工作機械・物流の主戦場、IMPACTは食品・建築・自動車・大型B2C寄り、QSNCCは医療・金融・統合体験系(AV)のように役割が分かれており、来場者属性も大きく異なる。さらに2026年からはProPak AsiaがBITECからIMPACTへ移転するなど会場再編も進んでいるため、最新の公式情報の確認が前提になる。本章では業界・会場・行動の3つの判断軸を整理する。
自社事業と展示会を逆引きで結びつける際は、以下の業界クラスタで考えると整理しやすい。
| 業界 | 主要展示会 |
|---|---|
| 工作機械・金属加工 | METALEX、INTERMACH、SUBCON Thailand |
| 自動車・モビリティ | Manufacturing Expo(Automotive Manufacturing 併催)、TyreXpo Asia、Bangkok International Motor Show |
| 食品・飲料・パッケージ | THAIFEX-Anuga Asia、ProPak Asia、Food Pack Asia、World of Coffee Bangkok |
| 農業・畜産 | Agritechnica Asia、VIV Asia |
| IT・FinTech・AV | DigiTech ASEAN、Money 20/20 Asia、InfoComm Asia |
| 物流・サプライチェーン | Logistics Automation Expo、Asia Pacific Rail |
| 医療・ヘルスケア | WHX Bangkok(旧Medlab Asia)、Health & Nutrition Asia |
| 建築・建材 | Architect Expo |
ニッチ分野(半導体、再生エネルギー等)はメジャー展の併催イベント(Concurrent Show)として組み込まれることが多く、単独展だけ追っていると見逃しやすい。出展テーマの公式ガイドの併催欄を必ず確認したい。
BITEC(Bangkok International Trade & Exhibition Centre) はバンナー地区にあり、製造業・工作機械・物流系の展示会が集中する。METALEX、Manufacturing Expo、INTERMACH、Logistics Automation Expo など、ASEAN全域から技術系バイヤーが集まる場として使われている。
IMPACT Muang Thong Thani はバンコク北部にあり、複数ホールと屋外スペースを擁する大型施設。THAIFEX-Anuga Asia、ProPak Asia(2026年からBITECより移転)、Architect Expo、Bangkok International Motor Show、DigiTech ASEAN、VIV Asia など、規模感のあるB2B+B2C寄りの展示会が中心になる。
QSNCC(Queen Sirikit National Convention Center) は中心部BTS駅直結のコンベンションセンターで、WHX Bangkok(旧Medlab Asia)や InfoComm Asia 2026 のように来場者が金融街・医療従事者・統合体験系プロから集まる展示会で使われる。アクセス重視ならQSNCC、規模・連動展重視ならBITECかIMPACTという大まかな住み分けで判断しやすい。
同じ展示会でも、出展・視察・商談同行で準備のリードタイムは大きく変わる。
「まずは出展せず視察」という選択肢も合理的で、特に初参加の業界では1度視察してから次年度の出展を判断する方がリスクは小さい。

2026年5月から10月は、タイ展示会のなかでも最繁忙期。 THAIFEX-Anuga Asia(5月)、Manufacturing Expo(6月)、WHX Bangkok(旧Medlab Asia、7月)と業界別の最大級展示会が立て続けに開催される。視察動線を組むなら2〜3展のはしごが現実的である。
2026年5月は東南アジアB2B展示会の集中月で、1週で複数展のはしごが可能な数少ない時期。
| 展示会 | 会期 | 会場 | 業界 |
|---|---|---|---|
| Asia Pacific Rail 2026 | 2026/5/6–7 | BITEC | 鉄道・交通インフラ |
| World of Coffee Bangkok 2026 | 2026/5/7–9 | BITEC | 食品(コーヒー) |
| INTERMACH 2026 | 2026/5/13–16 | BITEC | 産業機械・建設機械 |
| TyreXpo Asia Bangkok 2026 | 2026/5/13–15 | BITEC | タイヤ・自動車部品 |
| Agritechnica Asia 2026 | 2026/5/20–22 | BITEC Hall 98–99 | 農業機械 |
| THAIFEX-Anuga Asia 2026 | 2026/5/26–30 | IMPACT | 食品・飲料(ASEAN最大級) |
THAIFEXはASEAN最大級の食品見本市として知られ、出展枠は前年からほぼ満杯になることが多い。日系の食品関連企業はジェトロのジャパンパビリオン経由での出展も検討価値がある。
6月から7月は製造業・物流・医療が連続して入る月。
| 展示会 | 会期 | 会場 | 業界 |
|---|---|---|---|
| ProPak Asia 2026 | 2026/6/10–13 | IMPACT(2026年からBITECより移転) | 食品加工・包装 |
| Manufacturing Expo 2026 | 2026/6/17–20 | BITEC | 製造業全般(自動車部品併催) |
| Logistics Automation Expo Bangkok 2026 | 2026/7/1–3 | BITEC | 物流・倉庫自動化 |
| WHX Bangkok / WHX Labs Bangkok 2026(旧 Medlab Asia) | 2026/7/8–10 | QSNCC | 臨床検査・医療機器 |
| InfoComm Asia 2026 | 2026/7/15–17 | QSNCC | Pro-AV・統合体験 |
Manufacturing Expoは Automotive Manufacturing と同時開催で、自動車部品サプライヤー向けには年間最大の商談機会。ProPak Asia は2026年から会場をBITECからIMPACTへ移しており、過去の動線(BITEC前提の出張計画)と異なる点に注意が必要。InfoComm Asia 2026 もBITECではなくQSNCC開催のため、AV・統合体験系プロは会場確認を忘れずに。
8月から10月はオフピーク期にあたり、大型の連動展は少ない。ただし業界特化型のニッチ展や、地方開催(パタヤなど)の見本市が動くため、自社の業種に合えば来場者と出展者の距離が近く、商談効率はむしろ高くなることがある。
オフピーク期は会場の予約も比較的緩く、サテライトセミナーやプライベート展示会を独自開催する選択肢もある。タイ国内の代理店ネットワーク向けに数十名規模の招待制イベントを組むなら、この時期がコストとアテンションの両面で有利になりやすい。

METALEX(11月)とDigiTech(11月)が後半のハイライト。 年明けは食品・自動車関連が中心になり、3月の Bangkok International Motor Show、4月末〜5月の Architect Expo、5月末の THAIFEX で来期サイクルへつながる。
11月後半はMETALEXとDigiTechが立て続けに開催され、製造業IT部門の出張ピークとなる。
| 展示会 | 会期 | 会場 | 業界 |
|---|---|---|---|
| METALEX 2026 | 2026/11/18–21 | BITEC | 工作機械・金属加工(ASEAN最大級) |
| DigiTech ASEAN Thailand 2026 | 2026/11/25–27 | IMPACT Hall 7–8 | デジタル・SaaS・FinTech |
METALEXは40回目の開催で、CNC、シートメタル、溶接、産業ロボット、計測、スマート製造ソリューションまで幅広くカバーする。DigiTechはクラウド、サイバーセキュリティ、AI、データ分析の出展者が中心で、タイ・CLMV市場へSaaSを展開する企業の典型的な初期接点になる。
12月は年末休暇前で大型展示会は少ないが、業界団体主催のクローズドカンファレンスは活発になる。
2027年1月から3月で、現時点で公式に会期が公表されている主要展示会は限定的。確定情報と未発表情報を分けて把握することが計画立案の起点になる。
会期確定
会期未発表(2026年実績を参考まで)
参考までに、Health & Nutrition Asia は2026年(2026/3/10–12、BITEC)に開催済みで、VIV Asiaの隔年スケジュールに合わせて開催年・会場が変動する。畜産業界の出展計画はVIV Asiaの隔年スケジュールに合わせて立てるのが基本となる。2027年1〜3月に会期確認のため、各公式サイトを2026年中に再チェックしたい。
2027年4月から5月の主要展示会は、現時点で公式の会期が未発表のものが多い。計画立案は2026年実績を参照しつつ、2026年中に各公式サイトで最新情報を確認することを推奨する。
| 展示会 | 2026年実績(参考) | 想定業界 |
|---|---|---|
| Architect Expo 2027 | Architect'26:2026/4/28–5/3、IMPACT Challenger Hall | 建築・建材 |
| THAIFEX-Anuga Asia 2027 | 2026/5/26–30、IMPACT | 食品・飲料 |
| INTERMACH / Manufacturing Expo 2027 | 5月〜6月、BITEC | 産業機械・製造業 |
Architect Expo はASEAN最大規模の建築技術展で、不動産デベロッパー・ゼネコン・建材メーカーの来場が中心になる。建材・施工技術系のB2B出展者にとっては、年間で最も来場者属性が合うイベントの1つになる。2027年版の会期は各公式サイトの2026年後半の発表を待ちたい。

出展でも視察でも、6か月前を起点に逆算で動くことで失敗を最小化できる。 特にビザ、サンプル輸入、通訳、ホテル予約は前倒しで動かないと、ピーク時期に詰まりやすい。
6か月前まで
3か月前まで
1か月前まで
前日
1か月前まで
1週間前
当日
タイ展示会で多く見られる見落としを以下にまとめる。

タイのB2B展示会は、業界×時期×会場の3軸で絞ると意思決定の精度が大きく上がる。5月のTHAIFEX、6月のManufacturing Expo、11月のMETALEX が業界別の年間ハイライトで、ここを基準に他の出展・視察を組み立てると無駄が少ない。
出展でも視察でも、リードタイムは6か月以上を想定して動くと余裕が生まれる。サンプル輸入、ビザ、通訳、ホテルなど、当日では取り戻せないボトルネックはすべて2〜3か月前までに解消したい。会期情報や具体的な出展条件は各展示会の公式サイトで最新情報を確認することを推奨する。
参考:BITEC公式(www.bitec.co.th)、TCEB Event Calendar(businesseventsthailand.com)、ジェトロ J-messe(jetro.go.jp/j-messe/)。

Yusuke Ishihara
13歳でMSXに触れプログラミングを開始。武蔵大学卒業後、航空会社の基幹システム開発や日本初のWindowsサーバホスティング・VPS基盤構築など、大規模システム開発に従事。 2008年にサイトエンジン株式会社を共同創業。2010年にユニモン株式会社、2025年にエニソン株式会社を設立し、業務システム・自然言語処理・プラットフォーム開発をリード。 現在は生成AI・大規模言語モデル(LLM)を活用したプロダクト開発およびAI・DX推進を手がける。